私がネットの出会いを始めた理由は、実生活で全く出会いがなかったこと、単純に手っ取り早く出会えて、それでもまじめに交際できる彼氏が欲しかったからだった。

ラブサーチというサイトに登録してすぐに、興味をそそるプロフィールの人が現れた。それが、後に「彼氏」になる人だった。

私の好みである高身長。

某有名企業のIT 系エンジニア。

学生時代はラグビーをしていたスポーツ体形。

そして、彼もネットでの出会いを始めたばかりの、初々しい自己紹介文。

顔も見たことがないのに、肩書と文面だけで既にテンションが上がっていた。

さっそく私からメールを送ってみたところ、彼からもすぐに返信が。お互いに色々質問し合って意気投合。その後もメール交換は続いて、あっという間に会うことになった。

写真交換に関してはお互い話し合って、なんとなくネットの世界だし悪用されたら怖いよねってことで、それぞれ容姿の特徴を言い表すことにした。

彼は某サッカー選手に似ているとたまに言われると言っていた。もし、本当にその選手に似ているならけっこうなイケメン。そして私のタイプでもある。心の中でヤッター!と叫んだ。

自分の容姿を説明する側になって考えた。

結構難しい。今まで誰かに似ているとか言われたことがないからだ。とりあえず、色白の清楚系と言っておいた。下手に誰かに似ていると言ってしまうと、違っていた場合の反応が怖い。幸い「清楚系」なら万人受けしそうだし。彼のテンションも上がったようだった。

いよいよ会う日がやってきた。

毎日メール交換していたせいか、初対面なのにすでに知人と待ち合わせをしている感覚だった。変な人や怪しい人かもという不安はなかった。むしろワクワクしていた。

そして仕事帰りの待ち合わせ場所に「彼」が現れた。写真交換をしていなかったのに、お互いすぐ気づくことができた。

スーツ姿の彼は公言どおり、某サッカー選手に似ていた。昔、歯列矯正していたという歯並びがあまりに綺麗だったのが印象的だった。

想像以上にさわやかなスポーツ系イケメンの出現に私はすっかり好意を抱いてしまった。

その日は軽く飲んで、楽しくおしゃべりをして帰宅した。と、同時に彼からメールが届いていた。

今日のお礼と次回のお誘いだった。

それから彼とは時々会うようになった。けれども仕事が忙しくて休みがなかなか取れないとの理由で、会うのはいつも平日の晩だった。

そしてある日、彼から正式に交際してほしいと言われた。迷うことなく了承した。

ネットでこんなに簡単に素敵な人と出会えて、しかも彼氏ができて本当に感謝だった。

その後も時々会社帰りに数時間会うだけだったが、IT系の仕事の忙しさは知っていたので当たり前だと思っていた。彼に対して不満な点もなく、むしろそんなに忙しい中でも会社帰りに会ってくれて、1か月に1度ほどは土曜日に日帰りの旅行にも連れて行ってくれて、感謝するくらいだった。

そんな状況がたしか4か月くらい過ぎた頃、私は何か違和感を感じた。仕事帰りに会う時は彼は絶対に手を繋ぐことはなかった。けれども、一緒に遠くへ出かける時は必ず手を繋いできた。金曜や土曜にホテルでHした後も、夜中に起こされては帰宅させられ絶対に泊まろうとしなかった。日曜日は絶対に会ってはくれなかった。

今までの腑に落ちない行動を考えれば考えるほど、何かが確信に変わっていった。

彼は既婚者かもしれない・・・。

いてもたってもいられなくなり、私はまず彼にメールしてみた。電話や会って直接聞く勇気が出なかった。

「もしかして、本当は結婚している?」

彼から返事はきたが、「してないよ。何でそんなこと聞くの?」だけだった。

私は今までの不審に思ったことを説明し、もしそうなら正直に話してほしいとメールした。

結局、その日も次の日も彼からの連絡はなく、心のどこかで私の勘違いだったという期待も空しく、完全に彼は既婚者であることを確信した。

私はだんだん腹が立ってきて、彼にもう一度メールをすることにした。

もし既婚者なら、正直にそのことを話してもらいたいこと。

私は真剣に付き合っていたのに、騙していたなら、そのことを謝罪してほしいこと。

どうして結婚しているのに、こんなことをしてしまったのか理由を知りたいこと。

どうせ返事はもうこないと思っていたが、彼からとても長い文面のメールが届いた。

そこには、彼はやはり既婚者だったということ、奥さんとは結婚して5年になり1歳になる娘がいること、本当に仕事が忙しく夜中に家に帰ることが多く、それが原因で奥さんとはほとんど会話なく冷めきった生活をしているということ、離婚を考えているが、娘のことを考えるとすぐには決断を下せないということ、そしてネットでの出会いは彼にとっても初めてで、最初は軽い気持ちで仕事と家庭のはけ口にするために利用したこと、けれども私と出会って、予想外に本気になってしまい、罪悪感はたくさんあったものの、もはや正直に言えない状況になってしまったとのこと、そして正直に言えば、私が怒って関係もなくなってしまうことが怖かったと書かれていた。

ショックだった。

既婚者であることは間違いないと思っていたけど、やはり現実を突きつけられるとかなり傷ついた。怒りより悲しみの方が大きかった。

まだ小さな娘さんがいたことは、特にショックだった。

正直、私は彼のことが大好きだったので、もし奥さんしかいないのなら、ひょっとしたらいつか離婚するかもとか、未練タラタラなことも考えていたのだ。

けれども娘さんがいる以上、もはや私の中では無理だった。

彼はできれば今後も私と交際を続けたいと言ってきたが、そこはきっぱりと断った。

そして、どちらからもそれ以来二度と連絡することはなくなった。

ネットの出会いは、少なからず独身と偽って登録している既婚者はいると思う。女性も男性も。

そして単に遊びの人もいれば、冷めた夫婦関係のせいで本気で新しい恋を探している人ももちろんいると思う。

遊び目的の人ならたとえ相手が既婚者であっても楽しめるのかもしれないが、私のように真剣に恋愛相手を探していて本気になってしまうと、事実を知った時のショックは計り知れない。私は今回のことで、数日会社を休むくらいひどく傷ついた。

ネットの出会いを利用する人は、こういう失敗談も参考に十分注意し、何かあった場合のためにそれなりの覚悟で利用してほしいと思う。